すずろメンタルクリニック☆オフィシャルブログ
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パニック障害のこと

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『パニック障害』という精神科クリニックでとても身近な病気についてまとめてみました。兵庫県医師会の情報誌『Pulse』に寄稿したものを許可を得てアップします。



〜突然の発作も適切な治療でコントロール可能に〜

ある日突然激しい動悸や呼吸困難、目まいがしてこのまま死んでしまうのではないかという不安に襲われる。『パニック障害』はそんな恐ろしい病気です。しかも日本では人口の3.4%が発症するといわれており決して人ごとではありません。

明石市にある すずろメンタルクリニック院長の濱田先生にこの病気について詳しく伺いました。


■原因は神経伝達物質のバランスの乱れから

『パニック』とは、危機的な状況に置かれた時の心理状態やそれに伴う行動のことで、具体的には動悸・めまい・息苦しさや、倒れそうな感じ、死んでしまいそうな不安感・恐怖感などに襲われます。

『パニック障害』になると、実際には危ない状況でもないのに脳が誤作動してパニックと同じ反応(パニック発作)を起こします。

『パニック発作』は通常20ー30分程度で収まるので、救急車で病院に運ばれた頃には治まっていたり、検査をしても異常がないのに、同様の発作を何度も繰り返してしまうようになります。
パニック症状
原因としては、恐怖や不安を制御する脳神経のシステムの不具合が想定されています。脳内の神経と神経のあいだを行き来して情報を伝える役割を果たしている神経伝達物質のひとつに「セロトニン」があります。

セロトニンは恐怖や不安を制御するシステムに関与しているので、そのバランスが乱れることによってパニック発作が引き起こされると考えられています。ですから心臓や肺を調べても異常は見つかりません。
 
不安になりやすい体質のひとがなりやすいかもしれませんが、それよりも生活環境が大きく影響します。例えば、ストレスや夜ふかしなど生活の乱れや栄養のかたより、アルコールやカフェインのとり過ぎによって、パニック発作が起こりやすくなります。パニック障害そのものが原因で死ぬことはありませんが、放置すると深刻な状態になることがあるので注意が必要です。


■まずはパターンを把握しましょう

パニック障害は以下のような特徴的なパターンを示します。パニック発作はとても苦痛が大きいため、それに引き続いて「また発作を起こしたらどうしよう」という恐怖感や不安感が生じます。これを『予期不安』といいます。

予期不安は、過去に発作を体験した時の苦しさと、発作によって引き起こされる様々な恐怖感(例えば人前で恥をかいたり、他人に迷惑を掛けるのではないか、事故を起こすのではないか等)から生じます。

そのため、大勢の人が集まる場所や以前発作を起こした場所を避けるようになります。例えば電車やエレベーターに乗ること、トンネルに入ること、映画館や歯医者に行くことを怖がって避けるようになります。これを『回避行動』といいます。

苦痛が大きいパニック発作のみが注目されがちですが、問題の本質はこの パニック発作 → 予期不安 → 回避行動 という一連のプロセスが悪循環することによって、徐々に生活の質が落ちてしまったり、長期間ひきこもるようになったり、行動が変化することであるといえます。

パニックシステム
こうしてみると、ややこしい病気のように思えるかもしれませんが、パニック障害は精神科のなかで最も治りやすい病気のひとつです。順調に治療が進めば数ヶ月で改善する場合がほとんどですので、ご安心ください。


■治療の前にまずは内科へ

パニック障害と診断されている患者さんの中には、まれに甲状腺や呼吸器の病気が紛れ込んでいることがあるので、初めてパニック発作が起こった時はまず内科医の診察を受けておきましょう。血液検査や心電図などの検査を受けておけば安心です。

また、パニック障害に対してカウンセリングはあまり効果的ではありません。スタンダードな治療法である薬物療法と行動療法を組み合わせて治療することにより短期間で改善が見込めますので、心療内科や精神科で相談することをおすすめします。


■ 治療は登山と同じ
パニック障害という病気を治すには、一つ一つ段階を踏む必要があります。目標とする山の頂上が「薬に頼らず自分で不安をコントロールし、問題なく日常生活を送れること」だとすれば、一般的に次のような方法で治療を進めていきます。

 
◎薬物療法
まずは薬によってパニック発作の苦痛をやわらげます。幸い、パニック発作や予期不安には薬がとても有効です。登山に例えると、山の6合目まではバスで登るイメージで気楽に薬物療法を受けましょう。

使用される薬は大まかに分けて、即効性のある「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」と、即効性はないが効果が持続する「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」の2種類です。

ベンゾジアゼピン系薬は即効性があって便利なのですが、効果の確実性や副作用の観点から、SSRIを使用することが主流となっています。薬の効きは個人差が大きいので症状によって種類や用量を調整します。
 
ここで注意しなければいけないのは、パニック障害になると「薬を飲むこと」自体が不安になってしまい、薬を少なめに飲んでしまうことです。薬はある程度まとまった量を飲まないと効果を発揮しませんので、決められた用法用量を守りましょう。

また、不安になってネットで検索して不確定な情報を得ることによって、ますます不安が増幅されてしまうこともあります。少しでも薬に対して疑問がある場合は、気軽に主治医と相談しましょう。

 
◎行動療法
薬物療法によってパニック発作や予期不安が改善しても、回避行動はなかなか改善されません。次のステップとして、それまで避けてきた行動範囲を拡げることに挑戦します。例えば自宅から出られなかった人には、図3のような計画を立てます。

行動療法の例
この表を目の届きやすい場所に掲示したり、ひとつクリアするごとにご褒美を設定したりすることでモチベーションを高め、パニック発作や予期不安が出た場合は薬物療法を見直しながらステップアップを目指していきます。
 
このような治療によって、パニック発作に圧倒されていた状態から少しずつ自信を取り戻し、不安に対して自分自身で冷静に対処することができるようになれば、パニック発作も怖くありません。予期不安や回避行動からも解放され、いつの間にか「薬に頼らず自分で不安をコントロールし、問題なく日常生活を送れる」ようになっていることに気がついて、治療を終了することになります。


■周囲のひとも正しい理解と協力を

パニック障害にひとりで立ち向かうのは難しいことです。周囲の人は病気に対する正しい知識と理解を持って、患者さんを支えてあげてください。まだ症状が落ち着かないうちに「気のせいじゃない?」とか「もう薬のまなくていいでしょ?」等、安易なアドバイスは控えましょう。

病気で辛い時の経験は一生記憶に残って後の人間関係に影を落とすことがあります。周囲の人は、おおらかな気持ちで温かく見守っていただくことで回復も早くなることでしょう。


 ■治った後 気をつけたいこと

一度は治療を終了していても、まれに再発してしまう場合があります。そんな時はすぐに治療を再開しましょう。今度は登山のプロセスと頂上の景色を知っていますので、よりスムーズに治療が進み短期間のうちに改善が見込まれます。

最後に、どんな病気もそうですが、生活環境を整えて病気が回復しやすくなる基礎作りが大切です。パニック障害になったのをきっかけに、これまでムリをしていなかったか生活環境を見直してみてはいかがでしょうか。
セルフケア
 

第20回統合失調症臨床研究会のご案内

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統合失調症臨床研究会


統合失調症臨床研究会という、統合失調症についてあつく語る会の事務局を手伝っていて、チラシを作ったりシンポジウムに参加したりします。興味のある医療関係者の方はご連絡いただければ。


第20回 統合失調症臨床研究会
テーマ:「INNOCENCE ✕ WILD」

【日時】2016年7月9日(土)10日(日)
【場所】GREEN HOUSE aqua
【会費】事前登録8,000円 当日参加9,000円 (懇親会費込み) 
【日程】
7月9日(土)
 12:30 受付
 13:00 第1演題
■司会 
 鈴木康一(立川メディカルセンター柏崎厚生病院)
■演題
『約30年間未治療だった統合失調症の男性の支援を通して学んだことーコミュニティの中に役割を作ることの大切さについてー』
 大野美子(愛知県健康福祉部障害福祉課こころの健康推進室)

 14:30 第2演題
■司会 
 藤城 聡(愛知県精神保健福祉センター)
■演題 
『なぜ病識獲得を求めるのか?―医療観察法で処遇中の放火・殺人を行った事例からー』
 吉岡眞吾(独立行政法人国立病院機構東尾張病院)

 16:00 シンポジウム(オードブル&フリードリンク)
『星野弘の著作【分裂病を耕す・精神病を耕す】を再読する』
■司会
 杉林 稔(社会医療法人愛仁会高槻病院)
■シンポジスト
 濱田伸哉(すずろメンタルクリニック)
 徳田裕志(高田馬場診療所)
 島田 稔(亀岡シミズ病院)
 田中伸一郎(帝京平成大学健康メディカル学部臨床心理学科)

18:00 懇親会(メイン&フリードリンク)
20:00 終了


7月10日(日)
 10:30 受付
 11:00 第3演題 
■司会 
 小川 恵(淑徳大学総合福祉学部)
■演題
『人は死別をどう乗り越えていくのか?ー病的悲嘆を呈した統合失調症の女性の治療経験からー』
 戸部有希子(新百合ケ丘総合病院)

 12:30 第4演題
■司会 
 横田 泉(オリブ山病院)
■演題
『統合失調症臨床の型をたずねて:自然な回復の記述のために』
 横田謙治郎(川沿記念病院)

 14:00 終了

子育て神話から自由になるための進化心理学

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nagi_yoshida

当クリニックの児童思春期外来を受診する子どもの母親について、みなさんが強い罪悪感を抱いていることについて書きました(親の罪悪感がヤバい理由)。相変わらず、強い罪悪感を抱いてしまっている母親が多いこともあって、これについてもう少し掘り下げてみることにしました。 


■母子関係という神話

3歳までは母親が終日育てた方が良いという、かの有名な3歳児神話。親子関係、とくに母子関係、それも母子一体から母子分離の過程について、児童精神分析・児童発達心理・児童精神医学は驚くべき執念で細部まで記述しようとしました。実際に子育てをしてみるとよくわかるのですが、なかにはトンデモな記述もけっこうあって、そもそもなんでそこまで鼻息荒く必死なのか不思議なところです。

これは第二次世界大戦後、戦時下において疎開で親子離れ離れになった経験や、児童福祉医療施設がたくさんつくられることになった経緯等から流行したファミリー・ロマンスがその源流になっていたりするそうですが、現実はそんなにロマンティックではありません。。。

ドゥルーズと狂気 (河出ブックス)
小泉 義之
河出書房新社
2014-07-14

 
■ロマンティックな神話の弊害

母子関係による子育てのロマンティックな神話は、かなり根強くオトナたちの思考を規定しています。子どもが問題なくスクスク育てばよいのですが、不幸にも子どもに問題が発生してしまうと全て親の責任になってしまいます。特に母親が多方面から批判されて罪悪感を抱くことになります。

経済的にも時間的にも余裕があって、近隣に助けてくれるオトナがたくさんいる母親はまだしも、核家族で頼れる親類が近くにいなかったり、夫の帰りが遅かったりすると途端に厳しい状況になります。ましてや、母子家庭とかほとんど無謀で、そんな状況で立派に子育てできている母親のマネージメント能力は異常としか言いようがありません。

何よりも母子関係というロマンティックな神話から自由になることが罪悪感を軽減させることにつながると思います。そのためには別の考え方の枠組みが必要になります。最近読んだ本にヒントがありました。

思春期学
第1章 思春期はなぜあるのかー人類進化学からの視点 長谷川眞理子
東京大学出版会
2015-05-28

 
■進化心理学から考える

今から20万年前にアフリカでヒトが誕生し、10万年前から全世界へ拡散することに成功し、他の類人猿よりも繁栄することができました。成功の要因として重要なのは『共同作業』と『共同繁殖』であると言われています。

ヒトは『共同作業』を可能にするため多くの知識や技術を習得する必要があるので、一人前になるまでの子育てに要する期間と投資が膨大となってしまいました。そこでヒトは『共同繁殖』という戦略を選択するようになります。両親以外の血縁者や非血縁者の大勢が協力して子育てに携わることによって母親の負担を減らしました。

それによって、母親は共同作業や次の出産に専念することが可能になりました。ちなみに、人間に最も近い種であるチンパンジーの授乳期間は4年以上とヒトよりも長く、その間は母親がつきっきりになってしまって他のことに専念できなくなっています。

進化と人間行動
長谷川 寿一
東京大学出版会
2000-04


■出産後のメンタルヘルス

ほんの50年前から急激に進んだ核家族化によって、10万年前から脈々と続く『共同繁殖』という優れた戦略を放棄するようになり、そのシワ寄せは母親にふりかかっています。

母親が独りで子育てに取り組むと途端に「これでいいのだろうか」という不安感や「何か間違ったことをしてしまったのではないか」という罪悪感にさいなまれることになりがちです。

育児ノイローゼや産後うつ病には、このような事情が強く影を落としていると考えられます。特に、真面目な母親の方が罪悪感にとらわれてメンタルヘルスの問題を抱える傾向があります。先日、NHKでもとりあげられていましたNHKスペシャル “ママたちが非常事態!? ~最新科学で迫るニッポンの子育て~ ”

まして子どもに発達障害などの問題がある場合はもう大変で、親同士のネットワークをはじめ、教育・行政・医療が協力することが重要であると考えられます。


■家族教室について

具体的な対策として、当クリニックでは発達障害の子どもを持つご家族を対象に、こじんまりと『家族教室』を開催しています。前半は臨床心理士が発達障害に関する一般的な知識をレクチャーし、後半からグループワークを通じて母親同士の意見・情報交換や交流の場を提供しています。

参加者のみなさんは、同じような悩みを抱いていることが確認できたり、気軽に経験を語り合ったり知恵を出し合ったり有意義な時間を過ごすことができたみたいで、たいへん好評でした。今後も定期的に開催しますのでお役に立ていただければ幸いです!

第三回『臨床の記述研究会』に参加します。

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話すことはどこか不潔だ。執筆は清潔だ。話すことは不潔、書くことは清潔。不潔というのは愛想を振りまくからだ。

(ドゥルーズ『アベセデール』Culture-教養/三浦哲哉訳・國分功一郎監修) 
ジル・ドゥルーズの「アベセデール」 (<DVD>)
ジル・ドゥルーズ
KADOKAWA/角川学芸出版
2015-09-18

 
というわけで、第三回『臨床の記述研究会』というものがあってチラシをつくりました。この機会に『記述すること』について考えてみたいと思います。
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日時 2015年11月14日(土)− 15日(日)
会場 淑徳大学池袋サテライト・キャンパス
参加費 4000円 
 
11月14日(土)
13:00-14:30「恋するあなたにあいたくて」古屋聡(山梨市立牧丘病院院長)
15:30-18:30 ベイトソンセミナー「知識の量を測ること」野村直樹(名古屋市立大学人間文化研究科教授)
11月15日(日)
9:20-10:50「小説を書くこと 世界の再構成」渡辺俊之(高崎健康福祉大学健康福祉学部教授)
11:10-12:40「訪問看護と看取りへ向けての語り」村上靖彦(大阪大学人間科学研究科教授)

触覚過敏から考える共通感覚について

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ですが、感覚過敏のなかでも見過ごされやすいのが『皮膚感覚』つまり『触覚』の過敏性ではないかと最近考えています。

というのも、自閉症の患者さんのなかには、毎年夏になるとパニックになったり興奮して暴れること増えるひとがけっこういます。たいてい鎮静作用の強いお薬が漫然と処方されていたりするんですが、よくよく尋ねてみると真夏の暑さによって汗でカラダがベトベトする皮膚感覚がものすごく気持ち悪くて辛抱たまらないんだそうです。


■触覚過敏について
首まわりや脇など太い血管が走っている急所部位は特に触覚が敏感になっています。タートルネックのセーターのあの嫌な感じ!

また、触覚は他の感覚と違って全身にセンサーが分布していて、視覚や聴覚のように特定部位に限局していないので、触覚過敏は特定されにくく、見過ごされやすく、誤解されやすくなっています。聴覚過敏や視覚過敏は比較的対策が立てやすいのですが、触覚過敏はいかんともしがたいものがあります。

タートルネックのセーター、真夏のスーツ着用、満員電車で他人と密着、ベタベタとカラダを触られること、などなど耐え難い触覚は、時に精神面に重大な悪影響を及ぼします。

というわけで、自閉症の感覚過敏で最も重視されるべきは皮膚感覚=触覚の過敏じゃないかと思う今日この頃です。

対策としては、綿や麻の素材の衣服を着用したり、制汗デオドラントを使ってみるのがよいみたいで、今年の夏をコレで乗り切ったひともいますのでオススメです。500円ほどで手に入ります。


 

■触覚の特異性について
これを機会に触覚について考えてみました。そもそも原始的な生き物には触覚しか感覚がありませんし、赤ちゃんの触覚はあらかじめ他の感覚よりも発達しています。

触覚はもっとも原始的な感覚であり、視覚・聴覚・嗅覚・味覚など他の感覚を組織する細胞は全て皮膚表面にある上皮細胞が起源となって進化したものだったりします。

また、皮膚は神経と性格が似て精神にダイレクトな影響を及ぼす臓器であると言われています。


■触覚的に聴くこと
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出典 http://www.fujirockfestival.com/guide/

例えば、ヘッドフォンで音楽を聴くことと、野外フェスで生演奏を大音量で聴くことは全く異なる体験であって、後者は聴覚のみならず全身の皮膚における触覚ないし体性感覚や内臓感覚からダイレクトに音を受けとっているため情報量が格段に大きくて感動的なわけです。


■触覚的に視ること
「人は見た目が9割!」というしょーもない書籍がありますが、なにかと視覚情報によって物事を判断することが多いわけですが、熟練した画家や建築家などは触覚的に対象を捉えているとも考えられています。

セザンヌはまるで目が見えない人のように絵画を描きました。まるで物体をまさぐったようにして描かれた静物画。それぞれの物体は様々に異なる視点から捉えられていて、形態に独特の歪みを生じています。その結果、物体の存在感が異様に際立ち、見る者に迫ってくるという効果が生じています。
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ガウディまるで地べたを這いずりまわるような形態をした触覚的な建物を創作しました。
彼を視覚優位の発達障害という観点から分析している本があります。それによると彼のビジョンは「実際に目の前のものを見る機能と、いまだないものを映像で具体化できる機能〈中略〉その両方の機能をさしている」とありますが、それってつまり完成形にあらかじめ触れていたんだと思うんです。それだけでなく、無秩序で膨大な触覚的な感覚を統合して秩序をつくりだしたことろが凄まじいわけですが。



ビル・ヴィオラの映像作品みると否応なく触覚が呼び起こされます。ここまでくるともう視覚的な映像表現というよりは、人間がどのように世界を認識しているのかとか人間がどのように構成されていくのか、という次元が表現されているいっても過言ではありません。 



■共通感覚
中村雄二郎『共通感覚論』によると、大勢の人が共有する社会的な常識や判断は、ひとりひとりの様々な感覚の集合(共通感覚)から生まれてくるそうです。
共通感覚論 (岩波現代文庫―学術)
中村 雄二郎
岩波書店
2000-01-14

 
ここでも触覚の重要性が指摘されています。というのも、視覚は優秀だけどけっこうダマサれやすいからです。
waterfall
出典 http://happy2retire.com/wp/archives/2403

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出典 apital

sanokennjiro1
出典:http://nyaasokuvip.net/archives/9277
 
見た目はこぎれいでこざっぱりしてるんだけど、よくよく考えてみると、笑顔や演出がなんとな〜くうさんくさい!という共通感覚が多くの人々の間で共有された結果生じるダイナミズムによって、次々と化けの皮が剥がされていく現象があちこちで起こっている昨今、触覚的に物事を吟味することの重要度が増してるような気がします。


■共通感覚の精神病理学
かつてブランケンブルクは統合失調症の仕組みを共通感覚=自明性の喪失として説明しました。統合失調症の患者さんは共通感覚を喪失しているがゆえに、抽象的な問題や理論を取り扱うことは得意であっても、あたりまえの日常生活を送ることが苦手であると。

近年、むしろこれは自閉症スペクトラム障害の仕組みなのではないかと言われています。自閉症スペクトラム障害を理解するためには、視覚的に性急な知識を身につけるよりも、触覚的に鈍重であっても確実な知識を身につけていくことが重要ではないかと思う今日この頃です。

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