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子育て神話の呪縛

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話題の子育て本を読んでいると、とても興味深いことが書いてあったので紹介いたします。「子育ての大誤解」タイトルはかなりアホっぽいのですが、意外とエビデンス重視の骨太な内容の分厚い本でした。





■Kellogg博士のクレイジーな実験
自分の赤ちゃん(ドナルド)とチンパンジーの赤ちゃん(グア)を同じように育てるとどうなるか。1931年、心理学者のKellogg博士は今では考えられないクレイジーな実験をやってしまいました。
Kellogg博士とグア
Donald&Gua2
Donald&Gua

ネット上には実際の論文「Kellog. W. N. and Kellog, L. A. : 1933. The Ape and the Child.」(PDF注意16.8MB!!!)や動画も公開されています。




■想定外の結果、実験の中断
Kellogg夫妻は愛情を込めて我が子とチンパンジーを徹底して対等に育てました。ドナルドとグアはいつも仲睦まじく行動を共にしました。その結果、何が起こったか。

当初この実験はチンパンジーがどこまで人間に近づくかを想定していたようで、グアは簡単な道具を使ったり、いくつか言葉を理解できるようになったのですが、想定外の事態が起こったため実験は中止になりました。

なんと、ドナルドの発達が遅れてしまったのです。


■人間とチンパンジーの違い
ドナルドとグアを比較すると運動能力や言語能力など細かい違いはありましたが、決定的な違いは「模倣する能力」でした。ドナルド(人間)はグア(チンパンジー)の行動を模倣することができましたが、グア(チンパンジー)はドナルド(人間)を模倣することができませんでした。

その結果、人間であるドナルドはチンパンジーの行動を模倣するようになり、人間の言葉を覚えなくなってしまいました。

同じ人間である両親がさんざん愛情を込めてドナルドに語りかけていたにも関わらず、チンパンジーであるグアの影響を強く受けてしまいました。つまり、親よりも仲間の影響力の方が「種を超えて」強かったという衝撃的な事実が判明しました。

発達心理学では、幼少期の子どもは親からの影響を強く受けているとされています。いわゆる「三つ子の魂百までも」。そして、思春期になると仲間の影響を強く受けるようになるとされていますが、乳児の段階からすでに親よりも仲間の影響を強く受けるようプログラムされているということになります。


■集団社会化説
「子育ての大誤解」では、この他にも子どもは親の影響よりも同世代の子どもの影響を強く受けるというエビデンスがこれでもかと積み上げられ、「集団社会化説」を展開していきます。ざっくりまとめると、、、

昔から子どもの面倒をみるのは年長の子どもたちだった。子どもは自分に似た子どもに惹かれて集団を形成して他集団と差別化を図るようになり、その経験を通じて社会性を獲得していく。結局のところ、親は子どもに対して影響力を行使できないので、親が子どものために犠牲になって努力したってたいてい報われない。だから、親は子どもに執着せずに自分の人生を楽しむべきだ。

これって普段の診療で、子育てに疲れきった親御さんに対してお伝えしていることとかぶっていたりします。


■子育て神話の「最後の砦」
ただし、誤解しないでいただきたいのは、親が子育てを放棄していいということではありません。ネグレクトや虐待が子どもに悪影響を与えるのは明白です。つまり、親が子どもに影響を与えるのはネガティブなことだけで、むしろ虐待が子育て神話の最後の砦になっているのかもしれません。


■進化心理学による裏づけ
「集団社会化説」は進化心理学によって裏づけられています。(進化心理学については、過去記事「子育て神話から自由になるための進化心理学」でも紹介しました)

チンパンジーの兄弟はみな歳が5歳以上離れています。チンパンジーの子どもは5歳まで離乳ができずに母親との密着状態を維持します。チンパンジーの母親は育児に没頭しているため、働いたり次子を妊娠することができません。

一方で、人間の母親は授乳期間が短かく、早々に子どもを集団に預けて仕事をしたり次子を妊娠したりすることができます。つまり、どちらかと言いえば人間よりもチンパンジーの母親の方が子育てに熱心だし、人間は昔から保育所や幼稚園に預けて共働きするのがデフォルトで、誰もが保育士の役割を担っていたと言えるでしょう。

「集団社会化説」は、人類が発展するためにとった「共同作業」と「共同繁殖」という二大戦略による、当然の帰結だとするとスッキリ納得できます。


■それでも親にできること
学校でいったんスクールカーストが形成されてしまうと、キャラとポジションが固定されて抜け出せなくなってしまいます。

そんな状況下で、精神分析的に親子関係を掘り下げてみたり、行動主義的に行動分析をするだけでは仕方がありません。そればかりか、親の罪悪感を煽ってしまうことすらあります。

勉強熱心な親御さんほど「発達の専門家」の自説に従って一生懸命努力するのですが、結果的に、専門家の助言が正しいことを立証するために奉仕しているだけで、全然子どものためにはなっていないようにみえることがあったりします。

集団社会化説によると、子どもが所属する集団においてうまくいかなくなった場合、親は子どもの環境を柔軟に変更してあげることが重要であるという解が導き出されます。実際の診療場面でも、学校内外にいくつもリソースがあるので積極的に利用すべきだし、子どもが適切な環境に再び所属できるようになるだけで解決する場合がけっこうあったりします。

「子どもには愛情が必要だからと子どもを愛するのではなくて、いとおしいから愛するのだ。彼らとともに過ごせることを楽しもう。自分が教えられることを教えてあげればいいのだ。気を楽に持って。彼らがどう育つかは、あなたの育て方を反映したものではない。彼らを完璧な人間に育て上げることもできなければ、堕落させることもできない。それはあなたが決めることではない。」

公式ホームページをリニューアルしました。

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lounge2017

すずろメンタルクリニックのホームページをちょっと前にリニューアルいたしました。それにともなって「ごあいさつ」のページを変更しております。

すずろメンタルクリニック-タイトル


すずろメンタルクリニックの考え方

すずろメンタルクリニックは5つのコンセプトを掲げて運営しています。

◉アクセシビリティ Accessibility

メンタルヘルスをめぐる環境は徐々に整備されていますが、まだまだ本当に医療を必要としているひとに対して十分な医療が行き渡っているとは言えません。そのような状況を改善する一助となるために、少しでも身近に感じられて気軽に相談できるクリニックになることを目指します。

◉スタンダード Standard

当院は基本的に保険診療を提供しておりますので、独自の考え方によって診断や治療を行うのではなく、国際標準的な基準に適合した医療情報を提供し、それに基づいた診断と治療を行うことをこころがけます。

◉コラボレート Collaborate

医療サイドからの一方的な援助にならないように、患者さんサイドからのニーズをくみとって治療方針に反映させるよう配慮し、患者さんが主体的に治療に取り組めるようサポートいたします。そして最終的には、困難な状況を患者さん自身が自律的にコントロールできるようになることを目指します。

◉システマティック Systematic

メンタルヘルスの問題はご本人とそれをとりまく環境やシステムとの不調和から生じることがあり、診察室のなかだけでは治療が完結しないことがあります。そのような場合は、ご家族をはじめ学校・職場や外部の支援機関と協議・連携しながら効果的な支援ができるようサポートいたします。

◉アップデート Updated

学会や研修会へ積極的に参加して研鑽に励み、新しい知見をとりいれてクリニックの診療機能を磨き上げ、よりよい治療空間を提供できるよう努めていきます。 

パニック障害のこと

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『パニック障害』という精神科クリニックでとても身近な病気についてまとめてみました。兵庫県医師会の情報誌『Pulse』に寄稿したものを許可を得てアップします。



〜突然の発作も適切な治療でコントロール可能に〜

ある日突然激しい動悸や呼吸困難、目まいがしてこのまま死んでしまうのではないかという不安に襲われる。『パニック障害』はそんな恐ろしい病気です。しかも日本では人口の3.4%が発症するといわれており決して人ごとではありません。

明石市にある すずろメンタルクリニック院長の濱田先生にこの病気について詳しく伺いました。


■原因は神経伝達物質のバランスの乱れから

『パニック』とは、危機的な状況に置かれた時の心理状態やそれに伴う行動のことで、具体的には動悸・めまい・息苦しさや、倒れそうな感じ、死んでしまいそうな不安感・恐怖感などに襲われます。

『パニック障害』になると、実際には危ない状況でもないのに脳が誤作動してパニックと同じ反応(パニック発作)を起こします。

『パニック発作』は通常20ー30分程度で収まるので、救急車で病院に運ばれた頃には治まっていたり、検査をしても異常がないのに、同様の発作を何度も繰り返してしまうようになります。
パニック症状
原因としては、恐怖や不安を制御する脳神経のシステムの不具合が想定されています。脳内の神経と神経のあいだを行き来して情報を伝える役割を果たしている神経伝達物質のひとつに「セロトニン」があります。

セロトニンは恐怖や不安を制御するシステムに関与しているので、そのバランスが乱れることによってパニック発作が引き起こされると考えられています。ですから心臓や肺を調べても異常は見つかりません。
 
不安になりやすい体質のひとがなりやすいかもしれませんが、それよりも生活環境が大きく影響します。例えば、ストレスや夜ふかしなど生活の乱れや栄養のかたより、アルコールやカフェインのとり過ぎによって、パニック発作が起こりやすくなります。パニック障害そのものが原因で死ぬことはありませんが、放置すると深刻な状態になることがあるので注意が必要です。


■まずはパターンを把握しましょう

パニック障害は以下のような特徴的なパターンを示します。パニック発作はとても苦痛が大きいため、それに引き続いて「また発作を起こしたらどうしよう」という恐怖感や不安感が生じます。これを『予期不安』といいます。

予期不安は、過去に発作を体験した時の苦しさと、発作によって引き起こされる様々な恐怖感(例えば人前で恥をかいたり、他人に迷惑を掛けるのではないか、事故を起こすのではないか等)から生じます。

そのため、大勢の人が集まる場所や以前発作を起こした場所を避けるようになります。例えば電車やエレベーターに乗ること、トンネルに入ること、映画館や歯医者に行くことを怖がって避けるようになります。これを『回避行動』といいます。

苦痛が大きいパニック発作のみが注目されがちですが、問題の本質はこの パニック発作 → 予期不安 → 回避行動 という一連のプロセスが悪循環することによって、徐々に生活の質が落ちてしまったり、長期間ひきこもるようになったり、行動が変化することであるといえます。

パニックシステム
こうしてみると、ややこしい病気のように思えるかもしれませんが、パニック障害は精神科のなかで最も治りやすい病気のひとつです。順調に治療が進めば数ヶ月で改善する場合がほとんどですので、ご安心ください。


■治療の前にまずは内科へ

パニック障害と診断されている患者さんの中には、まれに甲状腺や呼吸器の病気が紛れ込んでいることがあるので、初めてパニック発作が起こった時はまず内科医の診察を受けておきましょう。血液検査や心電図などの検査を受けておけば安心です。

また、パニック障害に対してカウンセリングはあまり効果的ではありません。スタンダードな治療法である薬物療法と行動療法を組み合わせて治療することにより短期間で改善が見込めますので、心療内科や精神科で相談することをおすすめします。


■ 治療は登山と同じ
パニック障害という病気を治すには、一つ一つ段階を踏む必要があります。目標とする山の頂上が「薬に頼らず自分で不安をコントロールし、問題なく日常生活を送れること」だとすれば、一般的に次のような方法で治療を進めていきます。

 
◎薬物療法
まずは薬によってパニック発作の苦痛をやわらげます。幸い、パニック発作や予期不安には薬がとても有効です。登山に例えると、山の6合目まではバスで登るイメージで気楽に薬物療法を受けましょう。

使用される薬は大まかに分けて、即効性のある「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」と、即効性はないが効果が持続する「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」の2種類です。

ベンゾジアゼピン系薬は即効性があって便利なのですが、効果の確実性や副作用の観点から、SSRIを使用することが主流となっています。薬の効きは個人差が大きいので症状によって種類や用量を調整します。
 
ここで注意しなければいけないのは、パニック障害になると「薬を飲むこと」自体が不安になってしまい、薬を少なめに飲んでしまうことです。薬はある程度まとまった量を飲まないと効果を発揮しませんので、決められた用法用量を守りましょう。

また、不安になってネットで検索して不確定な情報を得ることによって、ますます不安が増幅されてしまうこともあります。少しでも薬に対して疑問がある場合は、気軽に主治医と相談しましょう。

 
◎行動療法
薬物療法によってパニック発作や予期不安が改善しても、回避行動はなかなか改善されません。次のステップとして、それまで避けてきた行動範囲を拡げることに挑戦します。例えば自宅から出られなかった人には、図3のような計画を立てます。

行動療法の例
この表を目の届きやすい場所に掲示したり、ひとつクリアするごとにご褒美を設定したりすることでモチベーションを高め、パニック発作や予期不安が出た場合は薬物療法を見直しながらステップアップを目指していきます。
 
このような治療によって、パニック発作に圧倒されていた状態から少しずつ自信を取り戻し、不安に対して自分自身で冷静に対処することができるようになれば、パニック発作も怖くありません。予期不安や回避行動からも解放され、いつの間にか「薬に頼らず自分で不安をコントロールし、問題なく日常生活を送れる」ようになっていることに気がついて、治療を終了することになります。


■周囲のひとも正しい理解と協力を

パニック障害にひとりで立ち向かうのは難しいことです。周囲の人は病気に対する正しい知識と理解を持って、患者さんを支えてあげてください。まだ症状が落ち着かないうちに「気のせいじゃない?」とか「もう薬のまなくていいでしょ?」等、安易なアドバイスは控えましょう。

病気で辛い時の経験は一生記憶に残って後の人間関係に影を落とすことがあります。周囲の人は、おおらかな気持ちで温かく見守っていただくことで回復も早くなることでしょう。


 ■治った後 気をつけたいこと

一度は治療を終了していても、まれに再発してしまう場合があります。そんな時はすぐに治療を再開しましょう。今度は登山のプロセスと頂上の景色を知っていますので、よりスムーズに治療が進み短期間のうちに改善が見込まれます。

最後に、どんな病気もそうですが、生活環境を整えて病気が回復しやすくなる基礎作りが大切です。パニック障害になったのをきっかけに、これまでムリをしていなかったか生活環境を見直してみてはいかがでしょうか。
セルフケア
 

子育て神話から自由になるための進化心理学

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nagi_yoshida

当クリニックの児童思春期外来を受診する子どもの母親について、みなさんが強い罪悪感を抱いていることについて書きました(親の罪悪感がヤバい理由)。相変わらず、強い罪悪感を抱いてしまっている母親が多いこともあって、これについてもう少し掘り下げてみることにしました。 


■母子関係という神話

3歳までは母親が終日育てた方が良いという、かの有名な3歳児神話。親子関係、とくに母子関係、それも母子一体から母子分離の過程について、児童精神分析・児童発達心理・児童精神医学は驚くべき執念で細部まで記述しようとしました。実際に子育てをしてみるとよくわかるのですが、なかにはトンデモな記述もけっこうあって、そもそもなんでそこまで鼻息荒く必死なのか不思議なところです。

これは第二次世界大戦後、戦時下において疎開で親子離れ離れになった経験や、児童福祉医療施設がたくさんつくられることになった経緯等から流行したファミリー・ロマンスがその源流になっていたりするそうですが、現実はそんなにロマンティックではありません。。。

ドゥルーズと狂気 (河出ブックス)
小泉 義之
河出書房新社
2014-07-14

 
■ロマンティックな神話の弊害

母子関係による子育てのロマンティックな神話は、かなり根強くオトナたちの思考を規定しています。子どもが問題なくスクスク育てばよいのですが、不幸にも子どもに問題が発生してしまうと全て親の責任になってしまいます。特に母親が多方面から批判されて罪悪感を抱くことになります。

経済的にも時間的にも余裕があって、近隣に助けてくれるオトナがたくさんいる母親はまだしも、核家族で頼れる親類が近くにいなかったり、夫の帰りが遅かったりすると途端に厳しい状況になります。ましてや、母子家庭とかほとんど無謀で、そんな状況で立派に子育てできている母親のマネージメント能力は異常としか言いようがありません。

何よりも母子関係というロマンティックな神話から自由になることが罪悪感を軽減させることにつながると思います。そのためには別の考え方の枠組みが必要になります。最近読んだ本にヒントがありました。

思春期学
第1章 思春期はなぜあるのかー人類進化学からの視点 長谷川眞理子
東京大学出版会
2015-05-28

 
■進化心理学から考える

今から20万年前にアフリカでヒトが誕生し、10万年前から全世界へ拡散することに成功し、他の類人猿よりも繁栄することができました。成功の要因として重要なのは『共同作業』と『共同繁殖』であると言われています。

ヒトは『共同作業』を可能にするため多くの知識や技術を習得する必要があるので、一人前になるまでの子育てに要する期間と投資が膨大となってしまいました。そこでヒトは『共同繁殖』という戦略を選択するようになります。両親以外の血縁者や非血縁者の大勢が協力して子育てに携わることによって母親の負担を減らしました。

それによって、母親は共同作業や次の出産に専念することが可能になりました。ちなみに、人間に最も近い種であるチンパンジーの授乳期間は4年以上とヒトよりも長く、その間は母親がつきっきりになってしまって他のことに専念できなくなっています。

進化と人間行動
長谷川 寿一
東京大学出版会
2000-04


■出産後のメンタルヘルス

ほんの50年前から急激に進んだ核家族化によって、10万年前から脈々と続く『共同繁殖』という優れた戦略を放棄するようになり、そのシワ寄せは母親にふりかかっています。

母親が独りで子育てに取り組むと途端に「これでいいのだろうか」という不安感や「何か間違ったことをしてしまったのではないか」という罪悪感にさいなまれることになりがちです。

育児ノイローゼや産後うつ病には、このような事情が強く影を落としていると考えられます。特に、真面目な母親の方が罪悪感にとらわれてメンタルヘルスの問題を抱える傾向があります。先日、NHKでもとりあげられていましたNHKスペシャル “ママたちが非常事態!? ~最新科学で迫るニッポンの子育て~ ”

まして子どもに発達障害などの問題がある場合はもう大変で、親同士のネットワークをはじめ、教育・行政・医療が協力することが重要であると考えられます。


■家族教室について

具体的な対策として、当クリニックでは発達障害の子どもを持つご家族を対象に、こじんまりと『家族教室』を開催しています。前半は臨床心理士が発達障害に関する一般的な知識をレクチャーし、後半からグループワークを通じて母親同士の意見・情報交換や交流の場を提供しています。

参加者のみなさんは、同じような悩みを抱いていることが確認できたり、気軽に経験を語り合ったり知恵を出し合ったり有意義な時間を過ごすことができたみたいで、たいへん好評でした。今後も定期的に開催しますのでお役に立ていただければ幸いです!

睡眠薬の注意点についてまとめました

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先日、ラジオ関西の健康相談コーナーの収録があって、『睡眠薬の注意点』についてまとめたのでブログにも載せときます。

日本は世界イチ睡眠薬を使っている国として有名で、お年寄りの1割が睡眠薬を使用しているという珍しい現象が起こっています。これはつまり多くの人が不眠症の治療をあきらめて睡眠薬を常用していると言えるでしょう。正しい情報と知識をもって治療に取り組めば不眠症のほとんどは改善するんですけどね。

Q 睡眠薬を使うとやめられなくなるのではないか?
普段からこの質問を受けることがとても多いのですが、これに対する回答は不眠症が軽いかどうかと睡眠薬を長い間飲んでいるかどうかで大きく異なります。

軽い不眠症で睡眠薬を飲み始めたばかりの方は、心配いらないのでそのまま不眠を改善させることに専念しましょう。良い睡眠状況を維持できるようになれば、必要な時だけ薬を飲むスタイルに変更して徐々にやめていくことができます。

重い不眠症で長いあいだ睡眠薬を飲んでいる方は、薬をお休みすることで逆に不眠症が悪化する場合があるので注意が必要です。薬を減らすにはコツがあるので、主治医とよく相談して計画的に取り組む必要があります。

Q 睡眠薬ってなんだか怖いんですけど?
「睡眠薬を飲むと死んでしまう」「睡眠薬はやめられない」というネガティブなイメージが定着しているのは、1960年代まで主流だったバルビツール酸系などの睡眠薬が原因です。これらは、たくさん飲んでしまうと呼吸が止まってしまうという重大な副作用と、ものすごく強い依存性がありました。当時は自殺目的で使う人が増えたことで社会問題になりました。

今ではこれに変わって比較的安全なベンゾジアゼピン系が主流になっているので心配はありませんが、ごくごくまれに昔の睡眠薬が出回っていることがありますので注意が必要です。 たとえば、ラボナ、イソミタール、ブロバリン、ベゲタミンなどです。


Q 睡眠薬を使うことの他にやるべきことはありますか?
睡眠薬よりも生活環境と生活習慣を整えることの方が重要です。これをおろそかにすると睡眠薬も効かなくなってしまいます。

■ 生活環境の整備
  • 夕方からは照明を控えめにする 特に蛍光灯は覚醒作用が強いで控える
  • 快適な温度にする、静かにする
  • 寝る前にモニターの明かりをみない 
    紫外線のお隣『ブルーライト』の問題です。
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ブルーライトとは、波長が380~495nm(ナノメートル)の青色光のこと。ヒトの目で見ることのできる光=可視光線の中でも、もっとも波長が短く、強いエネルギーを持っており、角膜や水晶体で吸収されずに網膜まで到達します。パソコンやスマートフォンなどのLEDディスプレイやLED照明には、このブルーライトが多く含まれています。

夜も明るい環境や、夜遅くまでパソコンなどのLEDディスプレイでブルーライトを浴びる生活は、サーカディアンリズムを乱れさせ、自律神経系や内分泌系、免疫系にも悪影響を及ぼします。寝付きが悪い、眠りが浅いといった「睡眠の質を低下」も、そのひとつでしょう。
ブルーライトをカットするフィルムやメガネが市販されていますが、アプリを利用したり簡単な設定をするだけでもかなり効果があります。
  • iOSの設定方法 
  • Androidアプリ 
  • Macの設定方法 
  • Windowsの設定方法
    パソコンの設定は「コントロールパネル」→「デスクトップのカスタマイズ」→「ディスプレイ」→「色の調整」から色温度を5000K以下に変更
    ディスプレイ/モニタ自体で、色温度を調整できる場合「色温度」を5000K以下に変更

■ 生活習慣の改善
  • 考え事をベットにもちこまない
  • 日中に太陽の光を浴びて適度な運動をする
  • 寝る前に水分をとり過ぎない
  • 空腹の場合は、消化の良い炭水化物や温かいミルクをとる
  • 夜にはカフェインやお酒を控える

Q「寝酒」はダメですか?
お酒を飲むと若干寝つきが良くなる感じがするので誤解されがちですが、アルコールは基本的に睡眠の質を悪くするので不眠症は悪化します。

Q 市販の睡眠薬やサプリメント、漢方などは効果ありますか?
医薬品と違って効果と安全性が確認されていない場合があるのでおすすめできません。ですが、明らかに効果があって役に立っていて、値段がお手頃なら継続して使用するのも選択肢のひとつだと思います。


<不眠症治療のポイント>

■ 睡眠薬の効果には個人差が大きいこと
同じ睡眠薬でも人によって効きめが全然違うことがあるので、どの薬が合うのかを完全に予測することはできません。主治医に遠慮して薬の効き具合を報告しなかったら不適切な薬を飲み続けることにもなりかねません。自分に合った薬を選んでいくためにも、日頃から主治医としっかりコミュニケーションをとるようにしましょう。

■ 睡眠薬に対して過度に期待せず、ツールとして利用すること
「睡眠薬のおかげで眠れている」のではなく「眠れるようになるために睡眠薬を利用する」というスタンスで、医師から処方されるまま飲み続けるのではなく、自分にとって本当に必要かどうか定期的に検討しましょう。

■ 生活環境と生活習慣を整えること
これは何度も強調したいところなのですが、薬よりもなによりも生活環境と生活習慣を整えることが治療の土台になります。それを行った上で、自分に合った薬を適切に使用することで、良い状態をつくりましょう。

■ 治療をあきらめないこと
以上のことに注意して良い状態が維持されれば、やがて睡眠薬を減らすチャンスが訪れますので、あきらめずに治療にとりくんでいただければと思います。

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